実は試験当日には全事例の問題は一通りチェックしていた。初見の感想は
事例1 いつもどおり変な問われ方でパッと見何聞いてるのかわからんけどいつもどおりか。
事例2 だいたいいつもどおりか、なんか過去問でみたような問題ばっかりやなあ。今年の目玉はアンゾフか。
事例3 いつもどおりやなあ。
事例4 あー出たよNPV。デシジョンツリーも絡んでめんどくせえなあ。けどROIは解き方書いてあるやん???
って感じで、とくに難しいとも簡単とも感じませんでした。詳しくは見ていないので切り分けがどうこう等細かい点まではわからないのですが。
事例4は難化?
事例4も確かにここ数年で一番簡単だった令和元年に比べると難化したなとは思いましたが、平成29、30年の問題に比べればひねりはなく、キッチリ対策していれば失点は防げるのではないかと思いました。
というのも、事例4のNPVは解く必要ないからです。解けない問題ではないと思うのですが、こんなもの
①本番の緊張感
②初見
③80分
④一日の最後の事例
で正解できる問題ではありません。正解率激低だと思います。特に今年は問題文を読んだ瞬間にデシジョンツリーの問題と取替投資の問題だとわかったため、どちらの問題も正解率5%もないだろうなと思いました。が、正解を諦め部分点狙いに切り替えれば大怪我することのない事例4だったと思いました。過去問キッチリ分析していれば即座に捨て問だと判断できます。
簡単な問題はキッチリ抑えて難しい問題は正解せずとも最低限の部分点を確保するのは相対評価の試験では鉄則です。採点基準も発表されないので推測になりますが、相対評価の試験なので正解率の低い問題で正解してもそうアドバンテージはなく、正解率の高い問題を落とした時にダメージが大きい仕組みになっているのではないかと思われます。
割とこのNPVの問題が空白の人もいるようで、実にもったいないことだと思います。おそらくですが部分点はもらえますので、難しい問題とはいえわかりやすくCIFやCOFが毎年いくらいくら、減価償却費がどうのこうのかいておけばそれなりに点数がもらえて、正解しなくてもまあまあの点数は稼げた問題だと思っています。
あと、今年の問題で辛かったのは記述問題が著しく難化したことでしょうね。経営指標分析を除いて記述問題が明らかに難しかったです。特に負ののれんの問題を落とした人は多いと思います。負ののれんなんて初めて?ですよね出たの。でもこれも差額100万円で1ポイント、負ののれんで1ポイント、特別利益で1ポイント、みたいな、部分点は稼げる問題だったんじゃないかなあと思います。
私は合格した年の事例4がたまたま難しくなかったのでそんなに戦略的に動くことはなかったのですが、今年受験していたら間違いなくNPVの問題は後回しにしていましたね。解き方をご丁寧に説明してくださったROIから解いたと思います。問題を見た瞬間はそう理解しました。
経営指標分析
ちなみにですが経営指標分析は◯棚卸回✕営業利益率でも、◯総利益率✕有形固回のどっちでもいいと思います。この2つはそう大差ないと思います。ただ数字だけに飛びついて◯売上債権回転率にするのはNGだと思います。
個人的には◯棚卸回✕営業利益率なんですが、これは与件文の中にレストランの営業利益が✕と書いてあり、またその後の問題でレストランをどうにかする問題が出題されているため、出題委員からの営業利益に注目せよとのメッセージと捉えました。棚卸資産については特に注目する記述はないですが、戸建住宅は好調とのことで。
有形固定資産回転率は特に記述がないので、、販売用で確保している不動産は棚卸資産のハズですし、この建物・建築物ってなんなんでしょうね。与件文に記述がない場合は特に触れないようにしようというのが私の戦略でしたが、◯総利益率✕有形固回でも違和感はなく、どっちでもいいのかなと思います。安全性については特に記述がないので、BSから判断するしかないんですけどね。
安全性は自己資本比率でも負債比率でも同じことなのでどっちでもいいです。今年は短期も長期も借入金が多いのでこの2つどっちかしかありません。
結局、事例4も去年に比べれば難化ではあるが、大失点せずまあまあの点を確保することはそう難しくないと思いました。
※後日追記
とある診断士の人が受験生支援のブログで◯の指標で「売上債権回転率」と書いているのを見ました。正直言って、受験生支援としても、実務家としても全くセンスがないと思いました。というのも、売上債権回転率がいいからって何なの?って話です。今回与件文で触れられることもなければ、その後の問題文で売上債権回転率の良さを活かすこともありません。
私が事例4の指標を選ぶ際に考えていたことはまずは与件文が第一。すると今回の◯は第2段落から収益性の売上高総利益率、効率性の棚卸資産回転率、第5段落でも収益性が良さそうな感じを抱きます。その後BSとPLを見ると売上高総利益率と棚卸資産回転率のどちらかで間違いないな、という感じになります。私は営業利益の問題点のほうが大きいので、収益性は✕で使うほうがいいなと思ったので売上高総利益率より棚卸資産回転率を◯とするのがいいのでは、と考えました。まあでも◯を売上高総利益率にするか棚卸資産回転率にするかはどっちでもいいと思います。どちらも間違いではないので。
一方、売上債権回転率は与件では全く出てこないためBSとPLをみて初めて判断できる指標です。一見同業他社と比較するとメチャクチャいい数字になります。そのため与件文を読まず数字から入った人は売上債権回転率にと書いてしまうこともあるでしょう。受験対策として、経営指標に時間をかけてられない人や苦手な人は、まあそれでもいいのかもしれません。
ですが、売上債権回転率がいいから何なんでしょうか?悪い場合はたしかに指摘しないといけないこともありますよ。資金繰りが苦しいとか、そりゃなんとかしないといけないですよ。支払いサイトとか、取引先の関係とか。でも良かったら何なん?って話ですね。D社資金繰り苦しい?借金多いけどそんなこと書いてないよね。書いてないこと勝手に設定するなんて事例4に限らずNGですよ。他に書くことなければねー、ともかくですが。
強みは活かして、弱みは克服するのか捨てるのか、これは鉄則ですので全然関係ない指標を良いと評価したところで何の意味もないですよ。しかも売上債権回転率を選択してしまうと設問2の作文がかなり苦しいです。だって資金繰りがいいからって何の強みの説明もできないもん、事実としては。設問1も「優れているもの」を選択する問題ですので、売上債権回転率もその意味では正解とも言えます。なので受験生が本番で売上債権回転率と書いたとしても間違いではないと思いますよ。ただし◯は1つしか選べないこと、その後の問題、さらには実務を考えるとここで売上債権回転率を選択するという考えは私にはありません。
個人のブログなら個人の趣味嗜好を好きなだけ書けばいいと思うのでともかくですが、大手のブログで売上債権回転率とか無責任に書いちゃうのどうなん、って思いました。まあぶっちゃけ道場のブログなんですが、道場はまだ他の大手ブログと比較しても役に立つ記事を書いているなあ、と思っていたのですが。正直、有資格者としての資質を疑う記事を連発してるブログもありますしね。こういうことがあるから経営指標もちゃんと与件文から引っ張ってこないといけないな、と再認識しました。来年以降の受験生支援はたぶんやらないと思うけど反面教師としてこの時思ったことを採用することにします。
難化するのはいつものこと
今年の受験生から「難化した」、「いつも傾向が変わった」という声を聞きました。でもこれっていわば当たり前のことだと思います。同じ傾向で易化したら、みんな過去問を解いてくるのでみんなできます、差が付きません。ですが結局は「見たこと内容な問題が出題された」(気がする)けどだいたいいつもどおりの問題なんです。時間が経ってみればやっぱり事どの事例も問われていることは今までとそう変わりなかったんじゃないか、と言われるのではないかと思っています。
過去問なんていろんなところで解説しているし、何回も解けばそりゃできるようになるのは当たり前なんです。問われ方は今まで見たことないけど結局芯の部分は同じ、というのは毎年同じことなんです。過去問を解いて表面だけをなぞるだけでなく、与件と設問にしっかり向き合えばそのことには簡単に気づくことができます。
ですがこれは相対評価。初見で完璧にできる人なんてそうそういないのです。難化した気になるのは毎年のように繰り広げられることなのです。
前にも書きましたが、過去合格した人でさえ試験直後に合格の手応えを持っていた人なんてほとんどいません。ほとんどの人が「難しかった」、「今年は出題傾向が変わった」と思っています。歴史は繰り返すのです。試験直後にそう言っていた人が、翌年はドヤ顔で「結局は毎年同じです」なんて言うんです。歴史は繰り返すのです。それに気づいた受験生から、一歩リードできるのではないかと思いました。
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