将来的に地方創生や地域おこしといったことをやってみたいと思っています。地方創生のやり方、起こし方は様々ありますが、今回は「聖地巡礼」について取り上げたいと思います。
聖地巡礼とは
巡礼(じゅんれい)は、漫画・アニメなどの熱心なファン(愛好家)心理から、自身の好きな著作物などに縁のある土地を「聖地」と呼び実際に訪れること。フィルムツーリズムやコンテンツツーリズムの一種。
wikipedia 「巡礼」より
今や「聖地巡礼」といえばwikipediaにこんな記載がされているほど一般市民にも浸透している用語となっています。今や日本語で聖地と言えばエルサレムやメッカのことではないのです。
その中でも有名な聖地と言えば岐阜県飛騨市(君の名は。)、茨城県大洗町(ガールズ&パンツァー)、埼玉県鷲宮町(現・久喜市、らきすた)あたりでしょうか。
その中でも最も聖地巡礼と町おこしに成功したのが茨城県大洗町かと思います。
ガールズ&パンツァーとは
通称「ガルパン」、女子高生が戦車に乗って戦うアニメです。2012/10〜12月、2013/3月に放送されました。全12月話+総集編2話。
華道や茶道と同じように「戦車道」がある世界で、主人公は戦車道の家元の娘です。ある出来事があり戦車道を辞め、戦車道のない大洗女子学園に転校します。しかし結局そこでも戦車道をやることになり、日本一を目指すというお話です。戦車道は戦争ではなく、剣道や柔道のようなスポーツの一つです。
戦車道という現実的でない世界で、弱小校が知恵と工夫で強豪校を倒すスポ根要素もあり、味方だけでなく敵のチームもキャラクターの個性が作り込まれており、徐々に人気を拡大させていきました。
また、私は戦車には詳しくないのですが、戦車の挙動もなかなかリアリティあるということで、従来の典型的アニオタ層だけでなく、ミリオタを獲得したことも人気の要因のようです。萌えとミリタリーを有機的に併せ持ち人気となりました。
大洗町とは
茨城県大洗町は太平洋沿岸の町で、海水浴場やアクアワールド茨城県大洗水族館等があり年間400万人以上が訪れる観光都市です。名物はあんこうで、毎年3月に開催されるあんこう祭りは14万人(後述)もの集客を誇ります。
大洗町とガルパン
ガルパンの舞台は茨城県大洗町です。作中では戦車に乗って戦うわけですが、そのうちの一戦を大洗を忠実に再現した街中で戦います。戦車で戦うので当然大砲は歩っぱなしますし、戦車で走れば街は壊れます。
作中で戦車に突っ込まれて破壊されるする旅館(割烹旅館 肴屋本店)があるのですが、その旅館も実在します。作中では戦車道で破壊された建築物は建て直してもらえるようで、むしろ壊してほしいみたいです。
大洗町の動き
電車やバスがガルパンでラッピングされる他、大洗町は至るところにガルパンのキャラクターのパネルが設置されています。ただパネルを設置するだけではなく各店舗がそのキャラクターのオリジナルグッズやノベルティを設置しています。
女子力の高い主人公の親友が高く作中で肉じゃがを作るシーンがあるのですが、そのキャラクターのパネルを設置している食堂では肉じゃがを販売しています。
他にも、全国大会準決勝ではロシア軍をモデルとした戦車部隊を率いる高校と戦うのですが、そのチームのキャプテンのパネルが置いてあるお店ではキャプテンをイメージしたデザインのウオッカを売っています。各店が趣向を凝らした商品やノベルティを用意しました。
いずれのお店も積極的に大洗に来るファンとのコミュニケーションを取り、まさに街ぐるみで聖地としてファンの受け入れ体制を整えていました。
成功の要因
ガルパンが聖地巡礼として地方創生に成功した要因として一番大きく考えられることは「大洗町が版権に甘えず積極的に乗っかったこと」と考えられます。聖地となったからといって、一度だけ人を街に呼んで終わり、では地域おこしとは言えません。リピーターとなり何度も足を運んでもらうことで成功と言えます。
大洗では各店舗がファンと積極的にコミュニケーションを取り、街の人はファンに大洗のことを教え、ファンは街の人にガルパンのことを教える、とコミュニケーションを積極的に図りました。その結果、ファンとしてもただ聖地を訪れるだけでなく、聖地をより詳しく知ることで作品への没頭感が強くなり、その結果作品や街をより好きになるという好循環となり、何度も大洗を訪れるきっかけにもなります。
毎年3月に実施されるあんこう祭りはガルパン放映前は3~4万人の来場者だったのが、ガルパン放映後は徐々に来場者を増やし14万人もの来場者を集客するまでになりました。これは大洗の街の居心地の良さを気に入ったファンが何度も足を運んでいる証拠でしょう。
もう一つの要因として、大洗町のほうが変な商売っ気を出さなかったことも成功の要因にあげられるようです。キャラクターグッズなので当然ロイヤリティーが発生するわけですが、グッズの金額が高くなかったようです。オタク層を相手にして強気の価格のグッズで稼ぐ形ではなく、ほとんど利益の乗っていないグッズを販売し、再来訪やコミュニケーションを取ることを中心に行っていたことも好循環を生み出すことにつながりました。
ただ単にパネルを設置したりポスターを貼っただけ、または版権に甘えてあまり関連のない商品を発売していただけでは、一度だけの集客はできても再来訪につなげることは難しいでしょう。アニメの知名度に甘えず、街としても聖地としてのホスピタリティを発揮したことが聖地とファンをつなげる要因となりました。
そもそもガルパン自体が地上波ではTOKYO MX、テレビ大阪、テレビ愛知の深夜に放送されていたのみで、全国ネットで視聴率の見込める時間帯の放送ではありませんでした。アニメの人気を元にした町おこしではありませんでした。その結果、最も成功した聖地巡礼を呼ばれるのは地元住民の理解が深かったことが大きく関係あるでしょう。
まとめ
聖地巡礼を成功させるためには、聖地側もただ甘えていては成功にはつながりません。制作元の聖地への配慮も必要ですが、聖地側へも原作や制作側への理解と積極的なファンとの交流が大成功のきっかけとなります。
ただのグッズ製作、しかもそれをプレミア価格で販売していてはファンは離れるだけですし、パネルを設置しただけでは一度は足を運んでもらえてもその後二度三度と足を運んでもらうきっかけにはなりません。
聖地となれば一度は街へ来てもらうことにつながるでしょうが、そこからリピーターを獲得することこそが地域起こしにつながります。聖地側の一体感の醸成が鍵となります。成功の要因は原作の人気だけではありません。
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