新型コロナウイルス対策で学ぶ経済学

中小企業診断士試験

民間向けの経済政策としてはどうやら10万円のバラマキや消費税等の減税が検討されているそうですね。10万円バラマキより消費税減税派がいるようですが、恒常的な減税ならともかく急を要する対策を打たなければいけない今回に限ってはその主張はないかなあと思っています(理由は後述)

その前に、減税を中小企業診断士試験的に考えます。

租税乗数

経済学・経済政策 平成28年第8問(設問1)

総需要 A=C+I+Gと示されています。45度線Y=Aも示されています。
Y=C+I+G となります。
消費Cについては、C=C0+cYと明示されていますがここには税に関する内容が含まれておりません。所得Yの中から税Tを除いた部分が可処分所得ということになります。つまり
C=C0+c(Y-T) が消費となります。これを代入します。
Y=C0+c(Y-T)+I+G となり、これを整理します。
Y=C0+cY-cT+I+G
Y(1-c)=C0-cT+I+G
Y=(1/1-c)(C0-cT+I+G)
となり、税Tの乗数は(-c/1-c)となります。限界消費性向cは0.8ですので
-0.8/(1-0.8)=-0.8/0.2=-4
となり租税乗数は4となります。

同様に政府支出乗数はGに係る乗数ですので
(1/1-c)となり、cに0.8を代入すると政府支出乗数は5となり設問1はウが正解となります。

つまり限界消費性向cが0.8のとき1兆円減税すると4兆円GDPが増え政府支出を1兆円増やすと5兆円GDPが増える、ということをさしています。
ちなみに租税乗数はマイナスなのは、増税をするとGDPが減るということを指しています。逆に減税すると値はプラスとなり、GDPが増えるということです。

租税乗数-c/(1-c)
政府支出乗数1/(1-c)
については分母が同じなので、絶対値の大小については分子のみで判断でき、限界消費性向は一般的に0<c<1なので政府支出乗数のほうが大きくなります。つまり減税するより政府に支出もらったほうがGDPは増えるんですね。机上論としては。

今回は消費減税が向いていないのはなぜ?

消費減税については、今日減税を決めたから明日から減税できるものではありません。日本中のありとあらゆるシステムの消費税率の設定を変更する必要があります。つまり昨年消費税率が8%⇒10%となった際に起こったようなシステム変更に近いことが再度発生するわけです。

レジの買い替えこそ不要ですがシステム変更についてはかなりバタバタするわけです。日本中のシステム変更が1日2日で終わるわけがありません。10%となっているステータスを0%にしてハイ終わり、とかいう単純なものではないのです。電子的なものだけではなく、どこのお店にもあるような手書きのPOPやチラシといったものだって全部変更する必要があります。

消費増税法案の成立→システムの変更、となるとどれだけの時間がかかるのでしょうか?日本銀行券や商品券を刷る時間の数倍もかかります。さらに減税が決まったのであれば減税直前は間違いなく消費が冷え込みます。緊急の経済対策なのに時間がかかる上に直近の消費が落ち込むような施策は果たして本当に有効でしょうか?システムの改修でシステム屋が儲かるだけです。

恒常的な消費減税であれば減税派の主張もわからないでもないですが、今回のコロナ問題での経済対策においてバラマキより消費減税をしろというというのはちょっとないかなあと思います。

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